【Kodak New Vision3 500T】ファーストインプレッションレビュー旧Vision3とどこが違う?
こんにちは「Kio」です。
今年も残すところあとわずか。
2025年は個人的に色々ありなかなかフィルムカメラに触れる機会が減ってしまった年だった。
そんな状況だが、フィルム界隈でちょっと興味深いニュースが。
「KodakがVision3の改良版を生産」
というニュース。
これについては海外等では既にいろいろな方が記事などにしているが、日本ではほとんど知られていない。
今回MARIXさんよりこの「New Vision3 500T」のサンプルを一本頂いたのでこちらのフィルムのファーストインプレッションレビューを書いていこうと思う。
是非最後までご覧ください。
Kodak Vision3のおさらい
Vision3フィルムとは、アメリカイーストンマン·コダック社が映画撮影用に開発したプロフェッショナル向けのカラーネガティブ/モーションピクチャーフィルムのシリーズだ。
主なラインナップとして
- 50D/MARIX 100D
- 200T/MARIX 320T
- 250D/MARIX 400D
- 500T/MARIX 800T
などがあり、それぞれMARIXフィルムをはじめ各社が販売している。
上記ラインナップ数字の後の「D」はデーライト(太陽光下)、「T」はタングステン(タングステン光下)での撮影用に色温度が調整されている。
このVision3、50DなのにMARIXでは感度が100としているのにも理由がある。
Vision3はECN-2という現像処理(ECN-2は特殊な現像で一般的ではない)を前提に作られているが、一般的なカラーネガフィルムの現像処理であるC-41でもVision 3を現像する事ができ、町の写真店や、自動現像機などではこのC-41現像という処理を使っている。
このC-41処理の方が現像能力が高いためフィルムの感度(ISO)が上がるという仕組みだ(凄くざっくりではあるが)。
そのため、50⇒100や500⇒800という表記になっている。
※「ECN-2 は映画用フィルムに使われる特殊現像処理。一方、一般的なカラーネガは C-41 現像で処理でき、手軽に現像可能。」
旧Vision3フィルムの問題点とは?
旧Vision3フィルムの問題点
今までのVision3では大きな問題があった。
現像そのものは先にも書いた通り「C-41現像」でも現像をすることが出来る。
しかし、今までのVision3フィルムは「レムジェット層」と呼ばれるカーボン層のコーティング処理がされている。
※レムジェット層(Remjet)とは、映画用フィルム(シネフィルム)の裏面に塗布された黒いカーボン層のことで、静電気の発生、フィルムの傷、光のハレーション(フレア)を防ぎ、カメラ内でのスムーズな搬送を助ける役割があります。この層は現像前にECN-2現像プロセスで除去されることが前提となっており、除去しないと写真用現像機を汚染するなどのトラブルを引き起こすため、一般の写真用現像(C-41)では処理してはいけないとされています。
この黒いコーティング層を薬品を使い最初にはがし、それから現像処理をしないと、自動現像機の薬品などが真っ黒になりダメになってしまう。
さらに、もともとハレーション防止のためのこの層をはがし撮影すると、、、




ご覧のように強い光源を写すと赤く滲んだようなハレーションが起こる。
更に、静電気にも余り強くなく、自動巻き上げの機種を使う時や特に乾燥する冬場での使用では静電気由来の物と思われる光線被りのような症状もでることがある。

しかし、これらの現象を好んで使用している方もいるかと思うので一概には「問題点」とは言えない。
これら写りについてではなく、一番の問題点は
【レムジェット層を剝がしていない状態での販売が多数報告】
されている点だろう。
先にも書いたが、このレムジェット層を剥がさない状態で一般的な自動現像機で処理すると、現像液がダメになり、最悪機械そのものが壊れてしまう可能性がある。
これらはヤフオク、メルカリなどでも多数報告、確認されている。
しっかりレムジェットを剥がす処理をしてあるメーカー販売の物(MARIXやシネスティル等)もあるが、レムジェットを剥がす加工をしていないのに、これらを記載せず、知らないまま現像店に持ち込みトラブルとなる例もたくさん見てきている。
さらにそういった未加工フィルムは長巻から自分で詰め替えており、この詰め替えの時フィルムを張り付けるテープ処理も自動現像機の故障に繋がったりするので本当に気を付けて欲しい。
ここまで簡単にVision3について書いてきたが、次は「New Vision3」はどう変わったのか?
New Vision3の進化ポイント
ここから書く情報はイーストマン·コダックのHPより確認した情報をまとめたもの。
New Vision3は従来のレムジェット層の代わりに
「AHU=anti halation undercort(アンチハレーションアンダーコートの略)」
という新技術による新しいコーティングを施し
- 耐傷性の向上
- 静電気の抑制によりホコリが付きづらい
- ハレーション抑制
- スキャンでのクリーンネス向上
- 従来通りECN-2(C-41)での処理が可能
- 従来のVision3と同時処理可能
という特徴を持つ。

更には「一番の問題点」と書いた「レムジェット層」が存在しないので、知らない方が間違って店舗に持ち込んでトラブルになるといった事が防げる。
そして、レムジェット層が無いので、未加工の状態で乳剤面はブラウンとなっている。(レムジェット層が残っているVision3は乳剤面は黒色)

もちろんフィルムエンドのテープ処理による自動現像機トラブルの懸念は残るが、それでも従来品よりトラブルの数は減るのは間違いないだろう。
そしてレムジェット層を剥がす手間や、処理時に出るカーボンの廃液等も無くなるのでエコの観点からも良いのではないだろうか。
このNew Vision3シリーズは、従来のVision3のシリーズ全てで生産が開始されているようで
- 50D
- 200T
- 250D
- 500T
- スーパー8、16mm、35mm、そして65mmまで、すべてのフォーマットで実施。
これらのフィルムが今後New Vision3に代わっていくと思われる。
そして少しややこしいが、名称もNewになっても「Vision3」の名前はそのまま、中身だけアップデートしている。
今後新旧混ざった状態で市場に流通していく可能性もあるのでそこは気を付けたい。
次はサンプルとして頂いた「New Vision3 500T」での実際の作例を見て貰う。
Kodak New Vision3 500T作例と感想
まず断っておくと
- 本来はECN-2での処理
- 自家現像、自宅スキャン
- 初めの1本のみの処理
という事を念頭に置いて以下の作例を見て欲しい。
現像処理:MARIX C-41現像液自家現像(C-41処理なのでISO800として使用)
スキャン:VALOI easy35
使用カメラ:PENTAX LX
使用レンズ:smc PENTAX-M 50mm F1.4
















どうだろう?
特に夜の写真では従来品では赤く滲んでいたようなハレーションは確認できない。
最初に乗せた作例と比べて見て貰うとその効果は歴然。
その他特徴の
- 耐傷·耐静電気
- 旧Vision3と同時処理が可能
については最初の一本でもあるし、まだはっきりと効果は実感出来なかったが、ハレーションによる赤い滲みは出ていないので、これだけでもAHUコーティングの効果はわかって頂けるのではないだろうか?

もともと500Tは「T」が示すように「タングステンフィルム」なので、撮影時の光源によってはタングステンフィルムらしい青っぽい感じはある。
ラチチュードも粒状性についてもこのロールに関していえば問題無いように思う。
但し、現状ではカメラのキタムラや町の写真店での当日現像についてはまだまだ対応していない所も多いと思われる。
現像はNew Vision3製品の安全性や流通が増えてきたら各社対応していくとは思われるが、今のところ現像出来る場所は限られそうだ。
New Vision3 500Tのおすすめポイント、注意点まとめ
おすすめポイント
- レムジェット層ではない、新設計AHU(改良下地層)により、従来のVision3で問題だったレムジェット層残りによる自動現像機トラブルのリスクが大幅に低減。
- C-41現像対応で扱いやすい映画用フィルムながら、一般的なカラーネガと同様の現像が可能になり、ユーザーのハードルが下がった。
- 静電気による影響が出ずらく、自動巻き上げの機種や、冬場、乾燥環境でも安心して使用でき、スキャン時の修正作業も軽減。
- ハレーションが抑制され、クリアな描写強い光源周辺でもにじみが少なく。Vision3らしい広いラチチュードは健在白飛び・黒潰れに強く、露出の許容範囲が広いため失敗しにくい。
- 500T(800)ならではの低照度耐性ISO500(800)の高感度で、夜景や室内、曇天でも安心して撮影出来る。
- ラチチュードが広く、後処理しやすいデータ化した際の階調が豊かで、カラー調整の自由度が高い。
- 映画用フィルムの描写を手軽に楽しめる従来は敷居が高かった「シネマルック」を、一般ユーザーでも現実的に使える。
注意点
- 新しいフィルムなので、現状現像する場所が限られている可能性がある。
- 旧Vision3の強い光源が赤く滲むのが好きな方は旧製品を選びたい。
- 流通が安定するまで新旧混在すると思われ、十分な量が流通するのか?という懸念。
さいごに
ここまで「New Vision3 500T」を使い、新旧の違いやNew Vision3の特徴等いろいろわかる範囲で書いてきた。
MARIXフィルムでは年明け位からこのNew Vision3
- MARIX 320T
- MARIX 400D
- MARIX 800T
この3種類を販売予定だそうで、旧Vision3の物と併売していく予定だそうだ。
現像もMARIXが販売すれば「MARIXフィルム現像サービス」が使えると思わるのでそちらも積極的に使っていきたい。
個人的には100Dや400Dでのハレーションによる赤い滲みが無いのであれば通常のカラーネガフィルムとして場面を選ばず使えるのでは?ととても楽しみ。
コダックも一般へのVision3シリーズ小売りを制限したり、一時期、経営についてネガティブなニュース等も流れてきてはいたが、このNew Vision3の発表は、フィルムユーザーにとって選択肢が増えとても良い話題だろう。
(筆者の印象として)近年富士フィルムのカラーネガ展開が比較的控えめに感じられる点があり、選択肢が広がるのは大歓迎。
そして、現状このNew Vision3も、個人ユーザーは手に入れづらいので、MARIXさん、、、各種頑張って販売して欲しい。
今後New Vision3を使ったフィルム等また色々使って皆様に情報をお届けしたいと思っている。
最後まで見て頂きありがとうございました。


