フランスの名門「アンジェニュー」の後継?トキナー倒産を救った?語れる激安大三元レンズ【Tokina AT-X 270AF Pro 28-70mm F2.8】
こんにちは「kio」です。
最近殆どジャンクカメラを購入してない、、、、というより、良さそうなジャンクカメラが全く無くなって来てる気がする、、、、
僕の住んでいる地域の〇-オフやキ〇ムラなんかも殆ど良さげなジャンクは見かけない。
僕が買い漁っているせいじゃないかともほんのり思うけど、とにかくジャンク不足なんだ!
そんなジャンク不足の中、久々に良さげなジャンクレンズを見つけたのでそちらの紹介と、作例を書いて行こうと思っている。
久々の「ジャンクカメラで遊ぼう!」シリーズ。
是非最後までご覧ください。
最後にMARIXが輸入販売しているフィルムデジタライズキット「VALOI easy35」をMARIX肥田社長から提供頂いたので触りだけ紹介。
久々に見つけたジャンクレンズは「Tokina=トキナー」の大三元だった
いつもの様に奥さんとカメラぶら下げて散歩中。
とあるリサイクルショップに立ち寄った。
そこで見つけたこのレンズ。
「Tokina AT-X 270AF Pro 28-70mm F2.8」
値付けもめちゃめちゃ安く、「おっ!?」と思い手に取ってみる。
僕は余りズームレンズ使わないが、28-70 F2.8というと所謂「大三元レンズ」と呼ばれるスペック。
見た目もごつくてカッコいい、、、、レンズ先端の金のラインもカッコいい、、、、
マウントを確認すると「Nikon Fマウント」だ、、、、
その時に持っていたカメラはハーフカメラのオリンパスペンDだったので、AFの動作は確認できないが、マウント側から絞り連動レバーを動かすとちゃんと絞りも連動している、絞り羽根に油浮きも無い、ピントリングもAFレンズなのにやたらヌルヌル動く、、、、、
しかし、レンズを覗いてみると後玉裏にカビがある、、、、後玉裏以外はチリ程度でキレイそう。
しかし、長年のジャンク漁りの経験から、
「後玉でもこれ位のカビなら順光なら全く影響なし!!!」
それに普通に後ろ玉外して清掃すれば落ちそうだし、AFが使えなくてもF2やF4でMFで使えばいいや~
と判断し、無事にお持ち帰り。
そして家に帰って色々このレンズの素性を調べてみたんだけど、マニア心をくすぐるエピソードが色々出て来た。
このレンズについて色々調べてみる。
家につきとりあえず近くに転がっていたF90Xに取り付けAFの動作確認をすると
「ウィ~ン、ウィ~ン」
と元気にAFが動作してくれた。
シャッターに合わせて絞りも変化しているのを確認。
これで普通に使えるぞ!!!
【オールドレンズレビュー3】Ai AF Nikkor 50mm F1.4S 特徴、作例
次は、全くこのレンズについて知らなかったのでちょっとググってみる。
まずはこのレンズのスペックについて
まずはこのトキナーAT-X 270シリーズは3種類販売されている
- 1988年発売/AT-X 270 AF = AT-X AF 28-70mm F2.8
- 1994年発売/AT-X 270 AF PRO = AT-X AF 28-70mm F2.8 PRO
- 1997年発売/NEW AT-X 270 AF PRO = AT-X AF 28-70mm F2.8 PRO NEW
今回手に入れたのは1994年販売の上記赤文字のレンズ。
こんな感じ。
まごうこと無き「大三元レンズ」なのである。
ぼくの様な小市民は「大三元レンズ」と聞くと、思わずひれ伏してしまいそうになる位憧れの存在。
因みに「大三元レンズ」とは
F2.8通しのズームレンズを指す言葉
広角ズーム、標準ズーム、望遠ズームでF値が2.8通しの大口径ズームレンズの総称。
今回手に入れた「Tokina AT-X 270AF Pro」は28-70なので標準大三元レンズという事になる。
対してF4通しのズームレンズは「小三元レンズ」と呼ばれる。
スペックも大体把握した所で更に深掘りして調べてみる。
トキナー倒産の危機を救った?フランス「アンジェニュー」の後継レンズ?
色々調べると出て来る出て来る!
逸話だらけのレンズのようだ。
その中でも興味深いトピックスをいくつか見つけたので紹介していく。
①トキナー倒産の危機を救ったレンズ。
これについては「トキナーレンズ担当者のぼやき」というコンテンツによると
この当時1994年のトキナーの業績はかなりヤバイ方向で、「このレンズが売れなかったらトキナー閉めましょう」と現山中社長に言われた事をはっきり覚えています。たぶん、山中社長は売れるんじゃないかって、確信があったのでしょうね。
そして、何と売れちゃったんですよ。
その当時、N社さんは35-70 F2.8と出遅れていて、N社さんのお客様に買って頂きました。AT-X 270 AF PROは、改良モデルなので、最初は保険としてAT-X 270 AFと併売だったんですが、受注が多く生産ラインが足りない。生産ラインを全てAT-X 270 AF PROに当ててAT-X 270 AFは速攻で生産中止に致しました。ただね、海外は日本国内ほど人気が無くて、「なんで日本だけ売れるのか理解出来ない」と各国の代理店に言われた事を記憶しています。当時の販売比率は日本と海外で4:6。今では考えられないほど日本国内に頼っていたのかと驚きます。
しかし、このレンズがトキナーの窮地を救った事も事実で、これからPROシリーズを確立して他社と差別化していった最初のモデルになったのも事実です。
トキナーレンズ担当者のぼやき より引用
②フランスの名門レンズメーカー「アンジェニュー」の後継レンズ??
これについても同じコンテンツより引用させて貰った
じつは、このレンズ(旧AT-X270AF 28-70 F2.8)、アンジェニューにOEMをしていたんです。外観はフォーカスリングを広く取ったデザインでトキナーデザインとは全然違う当時としては、斬新なデザインでした。
この時期からAFレンズのフォーカスリングについて社内で疑問が湧き出します。
「AFになって、何でフォーカスリングが無くなっちゃったの?」
ある日、アサヒカメラの撮影会でたしか、今は無き向ヶ丘遊園で、一人のお客様が当時最新鋭のα7000で、やりにくそうにAF望遠レンズをマニュアルフォーカスで、一生懸命ピントを合わせていました。
聞いてみたら、「だってピントが目に合わせようとしても鼻に合ってしまう」とのこと。この当時画期的だったαでも細かな合焦は難しいのだと言うことを私なりに認識しました。
だったら、フォーカスリングを幅広にして、「AFレンズでもマニュアルの操作性、操作感が良いレンズがあってもいいじゃん」と閃きましたね。
アンジェニューにOEMをしていたレンズのフォーカスリング幅は良い。
しかし、その幅広のフォーカスリングがAF時に回転してしまっては、帰って操作性が悪い。
AFの時はフォーカスリングが回転しないで、マニュアルのみ使用出来ないとまずいよな。
そんな中、当時の生産技術部にO部長がいて、なんと試作機でフォーカスクラッチを付けたレンズで遊んでいたんですよ。「このレンズ良いべ」だって。
すでにアンジェニューのOEMも終了した時期なので、「このデザイン頂き」って感じで、採用することに。
ただ、現行のAT-X270AFとレンズの性能的な差別化は?
それでなくても純正メーカーは非球面レンズを搭載して性能が良い。価格だけでは勝てるほど日本のユーザーは甘くないです。非球面レンズを入れないで性能を上げる手段って?
実は、トキナーの28-70 F2.8の設計値、厳密には28-70 F2.6-2.8だったんです。
開放から若干絞るように設定をすることにより、ワイド端の性能は良化しました。
また、部品精度を上げ、組み立て調整も出来るだけ基準を高める事に成功しました。
製造が大変なので、あまり使いたくはありませんがレンズ設計は同じでも、性能を上げる事は可能なんです。
コーティングもアンバー傾向のAT-X270AFからグリーンが良く発色するナチュラルな傾向に変更しました。この当時、どうしてもコートを量産すると狙った波長域に留まらない。
だったら、最初からずらしてみるか?
これがバッチリ決まり、量産可能に。
今では信じられない荒業ですが、当時やっちゃったんですの結果オーライ。最後にニコンDタイプ対応をレンズメーカーの中ではいち早く開発し、このレンズに搭載出来ました。また、報道関係の方々からの堅牢性の要求にも配慮した機構設計を採用しました。
でっ、名称は?
AT-X270AFとは外観が全く違うデザイン。重量、最大径も増加。フィルター径も72mmから77mmに変更。当時違う業界の製品にPROを使うのが流行っていたような。「PRO」を付けようと決定。
でもPROの定義は?
レンズの描写性能が良好
コンスタントなF値であること
フォーカスクラッチを搭載し、AFレンズであっても、マニュアルでの操作感を高める
堅牢性のある外観デザインとズーミング時にも全長変化の無い操作性の良い機構設計
でもね、営業は売れないって言ったんですよ。
大きく、重く、価格もAT-X270 AFより高い。
結局標準小売価格はフード別売の69,000に決定。AT-X270PROの初代の誕生です。
トキナーレンズ担当者のぼやき より引用
との事、、、、
アンジェニューと言えばスチールカメラ用の超高級レンズを作っていた事で知られている名門だ(現在はシネマ用レンズを作っているみたい)。
文中では明言はしていないが、当時アンジェニューでトキナーが作っていたレンズは「 Angenieux AF 28–70mm F2.6 」と思われる。
アンジェニューとのOEM契約が切れた後すぐに「Tokina AT-X 270AF Pro 28-70mm F2.8」を発売したようなので、トキナーとしてはアンジェニューの設計、製造ノウハウをそのまま持っていたと考えられるので、無理やりではあるが「アンジェニューAF 28-70㎜ F2.6」の後継レンズと言っても良い(気がする)のではないか?
勿論色々相違点はあるかと思うけど、こういう語れる逸話があるとマニア(自称)としてはなんだか気持ちも高ぶってくるものがある。
まぁ、僕はアンジェニューのレンズは一本も使った事が無いが、「フランスの名門レンズメーカー、アンジェニュー」という言葉だけでなんだか凄そうな気持になってくるよね。
そしてこのレンズSNSに入手報告した所反応が結構あったんだよね、僕はトキナーについて余り詳しくないが「Tokina AT-X 270 Pro」は結構メジャーなレンズみたいだ。
やっと作例 まずはモノクロから
長々と書いてきたけど、やっと作例。
使用フィルム:モノクロMARIX400 EI800
現像:ロジナール1+25 一段増感処理
使用カメラ:Nikon F90X
スキャン:EPSON GT-X830自動
テレ端でF8 かなりシャープな写りに見える。
これは50mmF8 これも十分シャープだ。
28mmF11で少しだけ夕日を入れてみたが、カビの影響は無さそう。
F8だが、ガッチリ太陽を入れると流石にフレアが凄いw
庭でお気に入りのスニーカー F5.6 70mm
35mmでこれも太陽をちらっと入れてみたが、ややフレアが出ている。
F4 28mm ワイド端はF4でもそれなりに解像している
これもF4 28mm
開放だった気がする、、、
試写終わりに夜ご飯を
夕方からの撮影だったのでMARIX400を一段増感して800として撮影して来た。
後ろ玉のカビの影響を見たかったので、夕方の逆光、夜の店舗の照明等を入れて撮影。逆光ではしっかりフレア、ゴーストが出ているが、他の方々の作例等を見る限り逆光耐性は余り無いレンズみたいなので許容範囲かな。
順光では絞るとしっかり解像感も有り、とても良い雰囲気に写ってくれていると思う。
「うん、予想通り普通に使える!」
でもここで悪いクセが出る。
写りは問題なさそうだけど、やっぱり後ろ玉のカビは気になる、、、
やっぱり、ジャンクレンズマニアとして、この後ろ玉のカビはなんだか気になる、、、、
という事で後ろ玉ユニットを分解してカビを清掃する事に。
ここで後ろ玉ユニットを分解するのに、一番手前のカビが生えているレンズを押さえているリングが異常に固く、無水エタノール位じゃびくともしない、、、、
そこで必殺の「アセトン」投入!!
このアセトンはネジ緩み防止剤や接着剤でガチガチの物も溶かせちゃう優れもの!
ひと昔前は100均で「除光液」として売られていたけど、最近は「アセトンフリー除光液」なるものばかりでアセトン100%の物が無いので、レンズの接着剤剥離には「アセトン100%」の物が絶対おすすめ。
※アセトンは場合によってはプラスチック、レンズコーティングを侵す場合があるので使用は慎重に
アセトン効果でガチガチの接着剤を溶かし、無事分解し、手前レンズ裏にアクセス出来たのでカビを清掃するとピカピカに!!
「アセトン」「ベンジン」「無水エタノール」はレンズ分解には欠かせない三種の神器だ!
レンズもキレイになった事だし、カラーでも試写したくなり仕事終わりにスナップへ!
カラーネガでの作例
フィルムはMARIX 800Tカメラはモノクロと同じNikon F90X。
MARIX C-41自家現像での処理でEPSON GT-X830自動スキャン。
28㎜ F4
焦点距離は忘れたが開放F2.8
F5.6
F5.6
F5.6
開放F2.8で35mm付近。やや甘い。
28㎜ 開放F2.8
70㎜ 開放F2.8 結構甘いね。
35㎜ 開放F2.8
70㎜ 開放F2.8
うん、、、、
「大勝利!!!」
じゃないかな?
開放付近での強い光源でも目立つフレアも無いし普通に「良い写り」だ。
70mm開放付近ではかなり甘いが、ピントの芯は残っているし、28mm、35mm辺りであれば開放でもそれなりにシャープに見える。
F5.6位まで絞れば解像感もあり、色の乗りも発色もとても良い。
清掃後のモノクロ作例も少しだけ
モノクロMARIX400
70mm開放F2.8 やはり甘い
50mm開放F2.8 70mmよりはましだがやや甘い
F8十分にシャープ
開放F2.8
地味だけど「Dタイプ」なのもポイント高し!
色々と作例見てもらったけど、このレンズニコンFマウントの物は「Dタイプレンズ」という事だ。
ニコンのDタイプレンズとは「距離情報」内蔵しているレンズで、Dは「Distance」の意味。
まぁ、今となっては特に恩恵は余り感じないかもしれないが、今回使ったF90Xで使うと、「3D-8分割マルチパターン測光」という、なんだか凄そうな名前の測光方式も使える。
後はニコン純正スピードライト(ストロボ)使用時により正確な調光が出来るということらしい。
ニコンF90Xと今回のTokina AT-X 270AF Proは共に1994年の発売で年代が合致しているのも気分が良い。
そして共に今年2024年で発売から30年の節目の年である。
中古相場について
先にも描いた通りこのレンズ今年で30歳である。
状態によって結構値段もバラバラだ。
ヤフオク、メルカリ、ネット中古で調べると大体
- 通常品動作品で約10,000円〜20,000
位の物が相場だと思う。
同じDタイプレンズである純正のニコン28-70mm F2.8Dより大分安くて軽いので、「何が何でも純正だ!」という方で無ければ、気軽に「大三元レンズ」を使えるのでオススメ出来るレンズである。
同じ様な性能のレンズとして、タムロンA09(28-75mm F2.8)があるけど、レンズ自体の質感は完全にTokina AT-X270 Proが上だ。
最後に
久々の当たりのジャンクを手に入れたのでテンションが上がったので勢いで書いてきた。
正直トキナーのレンズって余り良いイメージが無かったんだけど、実際使ってみて今まで持っていた「トキナー」のイメージを変えてくれるレンズだった。(トキナーファンの方ゴメンナサイ(^_^;))
写りについてはテレ端開放だとかなり甘いし、逆光にもあまり強くないが、「トキナー倒産の危機を救った」や「アンジェニューの後継?」みたいな逸話も含めとても気に入った。
1994年発売ということは世の中はAF電子カメラ全盛期で、これ以降のレンズって所謂「現代レンズ」となってきて、各社収差を抑え込んだり、プラスチックを多用して軽量で、開放付近からシャープだったり、コーティングの強化等でよく写るレンズが多くなっていくが、このAT-X270 Proは何だか金属の塊で開放では甘く、各収差もアリアリではあるが、絶妙なゆるさというのが今の時代フィルムで楽しむには楽しいレンズではないかと思う。
ちょっとキヤノンや、ペンタックスマウントの物も良い出物が無いか探してみたい。
最後まで見て頂きありがとうございました。
※この記事を書いている時にMARIX肥田社長からフィルムデジタライズキット「VALOI easy35」を頂いたのでちょっとだけ紹介。
肥田社長いつもありがとうございます!!!
この「VALOI easy35バロイイージーかな?」はUSB-Cで充電できるタイプの光源が備わったフィルムデジタライズキット。
届いて早速手持ちのデジカメとマクロレンズを用意しRAW撮影してスキャンしてみた。
ほぼ初見だったが簡単にセット出来てスマホのライトルームモバイルでRAW現像してみた。
端の処理がテキトーなのはさておき、、、、RAWで取り込んだデータをスマホだけで現像可能。
一応左が「ノーリツ」右が「フロンティア」をイメージして現像してみたが、設定もほぼ追い込んでいない状態で結構良い感じに現像出来たと思う。
上の2枚はペンタックスLXとハーマンフェニックス200
この2枚はRollei35とMARIX100D
全てVALOI easy35でのスキャンとライトルームモバイルでの反転現像。
フラットベッドスキャナーよりスキャナー自体はかなり早く、現像を含めても大きく時間短縮できるのはとても便利。
この「VALOI easy35」についての使用方法、コツ、ネガポジ反転の方法等、詳細レビューはまたじっくりいていこうと思っているので、フィルムスキャナー難民の皆さん楽しみにしていて欲しい!!
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